麗過去編に戻る
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「水曜麗回想」

「あ、ありがとう……。落ち着いた……」
俊介
(あれは数分の事だったのだろう。とても長く感じてしまった)
俊介
(そんなことより夏服だ。ああ、夏服だ!)
俊介
(ついというか不可抗力というか……。お腹付近に当たる「胸」を意識してしまった。
ブラは付けてないのだろうか? 小さいながらも強力な柔らかさを、備わっていた!)
俊介
(そう! 驚異的フル勃起だ!!)
俊介
(それがまぁ麗のおへそ辺りにがっちり当たっていたが……。
まぁ気にする問題でもないと思っていた)
俊介
(抱き合ってる途中、麗は泣くのを止めた。「ああ、落ち着いたのかな?」と思った)

「…………」
俊介
(……すると麗はつま先や腰を使いゆっくりと、動き出した。
いや、その動きは待ってくれ……。俺のあそこがマジでやばい)

【se:ガサゴソ……】

俊介
(更に、麗は右足を絡めてきた。
いやいや、体制がヤバい。倒れかねん。
俺は右足を出しバランスを整えた)

「んっ…………。っ……んふ……」
俊介
(ん? また泣いてる……? てか、あったかいっつうか、暑いな……夏だしな。
ああほら、あんまり動くからちょっとスカートがずり上がってきたぞ……)
俊介
(むむ……なんだか足が釣りそうだ。体制を整えたい……)
俊介
[俺は軽く手を緩めた]

(ビクッ!)
俊介
[麗はちょっとビクッとした。そして固まった]

「…………」
俊介
(そして俺と麗はゆっくりと離れ……)

「……っ////」

【se:たたたたー……】

俊介
(麗は無言でトイレへと走っていった。う〜む……。まずい事をしてしまった)

…………。
【背景:暗転】

俊介
[そして今に至る]

「希新ちゃんはね。1年の最初のときは私と友達だった」
俊介
「ん……?」
俊介
(え? 今もでは?)

「その時の希新ちゃんは囲碁院生らしくて……。凄いプライドが高い人だなぁって思った……」
俊介
(院生……!!)

「あれは中学入学して数日が経ったある日の事……」

【背景:暗転】
回想


[私は外見暗いせいか。特に話す友達も出来ずにいた。そしていつもの様に囲碁の本を読んで時間を潰していた]
希新
「ねーねー! それ囲碁の本でしょー?」

「?」
希新
「キミ、囲碁打てるのー?」

「え? うん……」
希新
「やったーw 実は私もー! ねーねー! 今度一局打ってみない?」

「あ……!」

「ご、碁盤なら!」

麗、碁盤を鞄から取り出す。

希新
「おーいいね! じゃあ早速打とー!」
希新
「とりあえず互先でいいよねー?」

「うん!」

(囲碁の友達……!!)

[嬉しかった。ずっとネットでしか打ってなかったから……リアルでの対局が出来ることが凄い嬉しかった]
希新
「私さー、実は囲碁の院生ってやつなんだよねーw わかるー?」

「え!? 凄い!!」
希新
「でしょw わからないことがあったらなんでも聞いてねー! 教えてあげるー!」

「ありがとっ!」

[序盤、対局は順調に進んだ。流石院生だなって思えるくらいだった]

【se:パチッ……。パチッ……(碁石音)】


[コレは負けるだろうなって思っていたんだけど……結果は]
希新
「あ……あれ?」

[私が勝っていた]
希新
「あぁっ……! ごめーんw そっか、そこ手ー抜いちゃダメなところだったーw
投了投了ー! 白と黒入れ替えてもっかいやろー?」

「あ、うん。良いよ」

[結果。私の勝勢]
希新
「あれー……」

[ヨセまで来ていて、もう動く事はないと言える状態だった]

「えーとっ……白の11目半勝ち……」

[その対局はヨセきって私がまた勝ってしまうこととなった]
希新
「…………」

「希新ちゃん……?」

プルプル……。

希新
「……す」
希新
「すごーい! 私より強い人が居るなんて!!」パァァア!

希新
「いやー私嬉しいよー! 麗ちゃんと勉強したらきっと私も強くなれる!
これからもよろしくねー! 麗ちゃん!!」

「え? え? ……うん」
希新
「麗ちゃんも院生になっちゃいなよー! 絶対上のクラス行けるってー!」

「えーっと私はそういうのはちょっと……」
希新
「ええー……!」

[その日から私たちは共に勉強して、何日も何日も、
暇がある時は戦い。たまに途中でやめ、また戦うというのを繰り返していた]

【背景:暗転】


[ある日のこと]

(右辺死んじゃってるから中押すなぁ……)
希新
「うっ……ぐ。う……っ……」

「!?」

「き、希新ちゃん!?」

[希新ちゃんが泣き出した]
希新
「ぐそーっ……。全然勝てないー……ひっ……」

涙をぬぐう。


「ほ、ほら! 私この前、希新ちゃんに負けたし……」
希新
「うっ……ずっ……」
希新
「大体9割がた麗ちゃんが勝ってる気がするーっ……」

「あ……」

(しかし、実際は10割……申し訳なくて負けて上げたのが1回……
その時は凄い希新ちゃん喜んでた。……でも)

「ごめん……。置石する?」
希新
「しないっていった!!」

「あう!?」

[希新ちゃんは置石は絶対しない子だった]

【授業中】


[希新ちゃんは凄い勉強熱心だった。授業中も隠れて囲碁の本を読んでたみたい]
希新
「ムムー……」

[勉強は私も良くなかったけど、希新ちゃんも良くなかった]


[そんなある日事件は起きた]

【休み時間】


「ココ押して白をアタリにしたけど、ここはいらなかったね」

「ダメヅマリで1手足りなくなってたし……」
希新
「知ってる……」
希新
「知ってることー! ベラベラ偉そうにいわないでーっ!」

「え……?」
希新
「うざいよもうー! 別に麗ちゃん先生じゃないのに! 私のお父さんの方が強いしー!」
希新
「麗ちゃんなんかうちのお父さんに絶対勝てないしー!」

「むっ……」
希新
「あ……」

【se:ガチャガチャ……(碁石片付ける音)】

希新
「……」

「希新ちゃんだって……私に勝てないくせに……」
希新
(ぐっ!!)

【se:パァーン!】


「っつ……! 痛っ……」


[希新ちゃんは私を叩いた]
男子
「なんだなんだ?」
希新
「…………っ!」

ざわ……ざわ……。
希新、きょどる。

希新
「う、麗ちゃんが悪いんだからー……!」
手を押さえながら。

【se:ダッ】
走って教室を去る希新。

女子
「あんた大丈夫?」

「あ、うん……」

【背景:暗転】


「金曜日の事だったよ……。それから土日の休み開けから数日。希新ちゃんは学校を休んだ」
ぬこ
「にゃー。お主よ……そこの主」
俊介
「ん?」

【背景:暗転】
話に戻って。


[1週間くらいして、希新ちゃんは学校に出てきた]
女子生徒
「わーわーおかえりー」

【se:たったったった】
希新が麗に近づく。


「良かった……。心配してたー……」

すっ


「よ……?」

麗の横を通る。
【se:たったったった】


「…………!」

[無視された]

「どうしたの? 希新ちゃん……」
希新
「悪いけど、話しかけないで……」

「……っ!」

[その日からだった……]

[気がついたら、希新ちゃんは私の知らない友達を作ってた。
それからだと思う、私がいじめられるようになったのは……。
最初は小さい嫌がらせ程度だった。
上履きにタクアン入れられたり……。
私が悪いんだなって思って、私からはなにもしなかった。
そのせいもあったのだろう。
それから少しずつエスカレートって感じで……。
1年間、私はそれに耐えてきた]

【背景:暗転】
戻って。


「そして、今に至るって感じかな……」
俊介
「よーしよしよし!! カルパス食うかー?」
ぬこ
「にゃー! おお! その肉はなんじゃ! それがしにくれまいか!?」
俊介
(はっ!? やべぇ……!! 猫と戯れててしまった!! 後半聞き逃したが大丈夫か!?)
俊介
(大丈夫だ、問題無い! 補正可能な範囲! っていうか院生が一般人にフルボッコかよ……。
俺だって希新側だったら泣くなそれは……)
俊介
(それだけ麗が強いってことなんだろうな。
簡単にリベンジなんて言ってしまったが、気が遠くなる目標だったのかもしれん……)