麗過去編に戻る
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「水曜日回想後の小雑談」
俊介
「そ、そうか……」
俊介
(やべぇ……序盤しか聞いてねぇ……。
とりあえず、麗と希新はちょっと喧嘩したと……確か囲碁の事でだな)
俊介
「話を聞いた中では、相手が自分より強いってだけじゃないか。
希新はもっと勉強するべきということだ。麗は悪くない」

「へへへ……ありがとう」
俊介
(……で、その喧嘩は解決したのだろうか? いや……まだだから相談しにきたのだろうな)

「でも、もしかしたら私のもっと知らない所で、希新ちゃんを傷つけてたのかもしれないし……」
俊介
「……それはあるかもしれない。だが、見えない範囲ではどうすることも出来ない。
それに強いという事とは、別に悪気があるわけじゃないだろう?」

「うん……」

「強さって「責任」だと思う……」
俊介
「責任か……」

「でもね! 聞いて!」

「ん?」

「私ね! 確かに変なことされたけど……」

「私、まだ処女だから!!」
俊介
(何故このタイミングでそれを言う!?)

「覚えてるかな……俊介君と囲碁打った日」
俊介
「あ、ああ……」

「お恥ずかしながら……あの日、私死のうかなって思ってた」
俊介
「え!?」

「し、死ぬな!! なんでそんなこと!?」

「ははは……そうだよね」

「いやはやー。なんていうか、私も今、考えるとバカだなーってw」
俊介
(や、やべぇ……!!)
俊介
(独りだと? いや……麗は囲碁を打つ相手がいないと死にたくなる鬱病だったんだ……!
だから希新と喧嘩して囲碁が打てなくなった。
あの時俺と囲碁を打っていなければ、今頃麗は……!!)

「もう何もかもが嫌になってて……全てを終わらせたくて……死んだら楽になるんじゃないかって。
そんな時に俊介君達の対局が目に入った」

「どうせ終わらせるなら、せめて俊介君と一局打ちたいなって気持ちだった。
でもどうやって、話したらいいかよくわからなくて。
椅子に座って悩んでた。今思えば凄い変な子www」

「そしたら俊介君が碁石差し出してくるんだもん。凄くビックリした。「エスパー!?」って思った。
嬉しかった……。もう、涙がでそうになるくらい」
俊介
(ああそうか、あの時泣いたのは久しぶりの囲碁の対人戦、嬉し泣きといったところか……)

「最後はもう耐えられなかった。「あんな風」に言われたらもう耐えられないよねw
止めようとしたけど、どんどん溢れてくる」

「それで恥ずかしくてというか……なんていうか、逃げちゃった……」

「それで、なんだかスッキリしちゃって……w で、思ったんだよ。
気まぐれ……「もう少しだけ生きてみよう」って」

「また会えるだけで、頑張れたのに。まさかお話まで出来ちゃうとはw
そこまで神様に頼んだつもりはなかったんだけどね……」
俊介
(あの日、麗はそんな思いだったのか……。なのに俺は……)
俊介
「何か悪いな。まだ会って数日なのに」

「え?」
俊介
「麗の過去だなんて、こんな大事そうなこと。俺なんかに色々と話してくれて、なんだか申し訳ない」
俊介
(ほとんど聞いてなかったが)

「そんなことない!」

「私は1年の時からずっと知ってた! 正確には希新ちゃんが休んだ時からずっと……! ずっと俊介君の事見てた!」

「だから血液型や星座家や族構成や成績や通ってる碁会所や使ってるPCや好きなキャラや性癖なんかも
みんなみんな知ってるから!!」
俊介
「ちょっと待て!! 色々知りすぎだ」

「だって……だって……////」
ヌコ
「にゃー。すまぬそこの若いの」
俊介
「ん?」

「私、ずーっと俊介君の事好きだったから……////」
ヌコ
「それがし、誠に空腹にあり。なんぞの食べ物をばそれがしにも下され……」
俊介
「よーしよし、おまえもカルパス食うか?」
俊介
(やっべぇ! また大事な部分を聞き逃した気がしたぞ!「○○きだったから」と多分言ったと思うが……!
んき……んき……敵!? 碁敵!?)
俊介
(ああ、そうか! だから敵である俺の情報収集から入ったわけだ!
麗の囲碁好きから考えれば、それ意外考えられないな!)
俊介
「ふむ……。ともあれ麗ほどの実力者、そう思ってて貰えていたこと、光栄に思う!」

「実力者とかそんな//// …… ってなんの事?」
俊介
「あ、そういや1ヶ月ぐらい前に体育の後俺の体操着がなくなる事件があったが……まさか?」

「うえっ……!?」

「あ、いや、あの、その! ごごごごごめんなさい!! ついその、興奮しちゃって……!」
俊介
「いやいい、怒っていないぞ。次の日洗って帰ってたから気にしてない」
俊介
(碁敵として、麗なりの情報収集だったわけか)
俊介
「それに母親に見せたら凄い喜んでいた。洗う手間が省けたわけだしな、その日は赤飯だった」

「あわ、あわわゎゎ……////」
かぁぁ!

俊介
「…………」
俊介
「なあ、ひとつ聞いていいだろうか?」

「ん?」
俊介
「お前は希新とも、俺とも戦った。もし俺とあいつが囲碁で戦ったら、どっちが勝つだろうか?」

「囲碁で……?」
俊介
「ああ、俺に気を使う必要はない」

「う〜ん……難しいけど……」

「希新ちゃん……じゃないかな」
俊介
「!」

「でもあのまま、まだ囲碁やってたらだけどね……。今はもうやってないんじゃないかな?」
俊介
「そうか……」
俊介
(希新……不良の友達で麗とも友達。あいつともいずれ対局出来る日がくるのだろうか……?)
俊介
(その前に麗との対局も控えている。これも先延ばしには出来ない)
俊介
(よし……! 再戦の日は明日にしよう!)
俊介
「なあ、麗!」

「ん?」
俊介
「明日、俺と(囲碁の再戦を)ヤろう! このまま何もしないで待ってても仕方がない! 明日の放課後だ!」

「ええ!? エッチするの!?」
俊介
(H? 譜面番号かな)
俊介
「おう! HでもIでもなんでもこい!」

「あ、愛!////」
俊介
「俺なんかで気分転換のひとつになれば、何度でもいいぞ! 今はもう暗いし、もう少し知識を高めておくぜ!」

「は、はいぃ! 私も勉強しておきます!!」
俊介
「じゃあな! また明日!」

「うん……! また……」
俊介
(そういえば、麗に対しては「打つ」じゃなくて「やる」って言ってるな。
別に子供扱いしてるわけじゃないが……伝わってる様だし別になんでもいいか) ←伝わってない
俊介
[そんなこんなやり取りがあり、俺たちは家へと帰った]