麗過去編に戻る
16
「木曜日俊介逆転」
【背景:倉庫】
回想から戻って。

希新
「もう投了したらどう? 差は歴然ー……」
俊介
「まだ中盤、あって20目差……! まだなんとかなる!」
希新
「中盤www もう終盤だと思ってたわーwww」
DQN
「こりゃ希新ちゃんの勝ちだわなーw」

ざわざわ……

俊介
(20目差ぐらい……正しくヨセきっても足りるのだろうか?)
俊介
(いや……難しい。なら無理手を承知で打つしかないのか……!)

「…………」

「俊介君……私、待ってるから……」
俊介
「ん?」

「私、この対局に負ける事があっても、あの公園でずっと待ってるから……!」
俊介
「……おい、縁起でもない! 何を言って……!」
希新
「はははははwwww 愉快ね!! 実に愉快!!
あんたより強者である麗にまで「お前は負け宣言」されちゃ! もう投了するしかないわねーwww!!」
俊介
(な……なんだよ麗。もう俺が勝てないっていうのか!? そう言いたいのか?)
俊介
(っていうか……あの公園ってなんだよ……あの……?)
俊介
(…………)
俊介
「…………!」
希新
「どうしたの? 投了しないのー? まぁ寿命伸ばすのは結構だけどw 暗くなる前にうち終わらせてよねー」
俊介
「……」

【se:カサッ……】
碁石を取る。

【se:パチ……】
碁石を置く。

希新
「へぇー、打つw」
希新
「だからそこは、ここを守ればねー……」

【se:スッ……】
碁石を置こうとする。

希新
「……!」

【se:ピタッ】
手を止める。

希新
(あ……あれ? おかしい。おかしい……!? 確かそこは守れば下辺の黒は守れる……でも守れば……!)
希新
(中央の白が……蘇る……!?)

【se:ガタッ】
希新、前かがみに。

俊介
「そうだ……! ああ、なぜ見逃していたんだろうか……。いや、俺も無意味とは思っていた……」
俊介
「だがこの1手で……俺は息を吹き返す!!」
希新
「……っ!!」

(気づいた……!)

(行ける……! 足りてる! 間違えなければだけど、足りてる……!
この勝負、まだ俊介君に勝ち目がある……!!)

【se:ギリッ】
歯を食いしばる希新。

ゴゴゴゴゴ……

希新
「……してやる……殺してやる……!!」
希新
「ずぇってぇこの石!! ぶっころしてやるッッ!!!」
【se:ガシャ……!!】
【se:パーン!!】
希新石を打つ

【se:カサッ……】
【se:パチッ】
俊介石を打つ

希新
(ああ……いつもだ。いっつもだ)

【se:ガシャ……!!】
【se:パーン!!】
希新石を打つ

希新
(いつも大事なところで……私は……)

【se:ガシャ……!!】
【se:パーン!!】
希新石を打つ

希新
(大事なモノを……失ってしまうのは……!!)

【se:ガシャ……!!】
【se:パーン!!】
希新石を打つ

俊介
「!!」

【se:パチッ】

俊介
「これで……完全に活きた」

【ゴオオオオオオッ!!】
盤面全体。

俊介
「二眼、もう動く事はない……」
希新
「…………!!」
希新
「ま……まだよ! まだまだ!! まだヨセで……なんとでもなる!!」

【se:パーン!!】
ギリッ
希新
「ぐっ……!」

【se:カサッ……!】