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17
「木曜日終局」
【背景:倉庫】

………………。
…………。
……。

お爺さん1
「希新ちゃんはほんとう……強くて、優しい子だよ」

【se:パチッ!】

お爺さん2
「はっはっはっはw こりゃ希新ちゃんに一本取られたなぁw」

【se:パチッ!】

お爺さん3
「また、よろしくね。希新ちゃん」

【se:パチッ!】

お婆さん
「私も教えてもらおうかしらねー」

【se:パチッ!】

おじさん
「院生になってもまたきておくれよ」

【se:パチッ!】

………………。


「希新はとても賢い……」

【se:パチッ】


「父さんも鼻が高いぞー!」

【se:パチッ】


「そうだ……今度碁盤を買ってやろう」

【se:パチッ】


「ああ、父さんも負けられないなw」

【se:パチッ】


「自慢の娘だ……」

【se:パチッ】

………………。

希新
「ぅ……」
希新
(私は……)

【se:パチッ】

希新
「うぅ……うくっ……ぅ……」
希新
(私はずっと……)

【se:パチッ】

希新
「ぅ……うっ……ぅう……」
希新
(このゲームが好きで……いたかっただけなのに……!)

【se:パチッ】

希新
(どうしてこうも……このゲームに嫌われてしまうのだろう……!!)
希新
「…………」
俊介
「……終局だな」

整地する俊介。
それをただ眺める希新。

DQN
「……あれ? どっち勝ったの?」
DQN
「見りゃわかんじゃん。希新の負け」
DQN
「はぁ!? ふざけんな!! ぜってー勝てるっつったのに!! いくら賭けたと思ってんだ!!」
俊介
「11目半差だ。……凄いな、あの差からここまで縮めるとは」
希新
「ぅ……ぅ……」

【se:ガチャ……】
盤上の石を崩す音。

希新
「だからよ……だから……だから、私は「こいつ」が嫌いなのよ……!!」
俊介
「?」
希新
「こんな糞ゲーが……!! こんな糞ゲーのせいで!! 人生狂わされた!!」
希新
「嫌いだこんなものおおおおおーーー!! 嫌いだ嫌いだ!! 大っきらいだ!!」

【se:ガダガダッ!!】

俊介
「おっt!?」

【se:バタン!!】
リアルに碁盤ごと机が倒れる。

希新
「きらい……きらい……」

うずくまる希新。

俊介
「……」
俊介
「……嫌いか。そんな嘘、よく吐けたものだ」

【se:ピッピ……】
携帯をイジる俊介

希新
「……は?」
希新
「お前に何が分かる!! お前なんかに……!! なにもわからねぇクセにうだうだと……!!」
希新
「私が嫌いだっつったら嫌いなんだよ!! ゴミだこんなもの!! よくこんなものに……」
希新
「こんなクソみたいなものに私は踊らされてきた!! 人生台無しにされた!!
好きなわけねぇだろうが!! っこんなものおおお!!」
希新
「こんなものに……私は……!」

スッ……

希新
「…………っっ!!」

俊介が携帯を希新の目の前に見せる。

【背景:暗転】

俊介
「この髪型……お前だよな」
希新
「な……?……な……」
俊介
「……希新。この画像に写り込んでるお前は、囲碁が嫌いだなんて吐くような奴には俺は見えない」
希新
「お、お前……!! なんでその画像を!?」
俊介
「お前が送ってきた画像だ。なにかの手違いだったのか?」
希新
「……!?」

【se:カチッ】
希新携帯を取り出す。

【se:ピッピ……】
希新
「……はっ!」
希新
(あ、あの時……! 私の間違いで? この画像が……)
希新
(っ……!)

【背景:明転】
…………希新、碁盤届いたぞ…………

【挿絵:希新と碁盤の写真】
それは、希新から送られてきた、希新と
碁盤が写った画像だった。