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「木曜日希新回想2」
過去数ヶ月前

【se:ぎぃ……】
椅子に座っている希新。

【se:すっ……】
立ち上がる希新。

【se:たったったった】
碁盤の前へ。

希新
(父から貰った碁盤……。もうこんなにも、ホコリが溜まって……)

【se:かさ……】

【se:パチッ】

【se:かさ……】

【se:パチッ】

【se:かさ……】

【se:パチッ

一人で囲碁を打ち出す希新。

希新
「……ぅ……」
希新
(ごめんなさい……)
希新
「うっ……うう……」
希新
(ごめんなさい……ごめんなさい!)
希新
(私は……力が無かった。
あなたに愛される力が……無かった)
希新
(悔しいのに……悔しいのに)
希新
(もう、打つ気はなかったのに……打つ気はなかったのに)
希新
(私は……どうして……。
またこうやって打ちだしてしまうのだろう……)
希新
(本当に……この囲碁が……好きだった)
希新
(私は、こんなにも……大好きな遊びだったんだ……!)

【背景:高原家玄関】

過去

希新
「わぁ、スゴーイ! 大きい碁盤!」

「ははは……慌てるなよ」
希新
「重ーい。 私が部屋に持っていくー……」

「大丈夫か? 持っていけるか?」
希新
「平気平気ーw」

ゆらっ
【se:ゴン!】
壁にぶつかる希新

「!?」

「ほらほら、無茶するなって……」
希新
「ねぇお父さん……」

「どうしたんだい?」
希新
「私が大きくなったら、こんなおっきいーい碁盤が欲しい!」
希新
「私専用の、おっきい碁盤でいっぱいいっぱい、みんなと対局したい!」

「おお、そうか」

「なら……、もう少し大きくなったら、希新にも買ってあげよう。
そしたら、いっぱい対局ができる」

「そして……希新に友達がいっぱい、出来るといいね」
希新
「うん! いっぱい友達作るんだ!」
希新
「あ、そうだ! せっかくだから対局しようよ! この碁盤で!」

「おお! やるか!」

「手加減ナシだぞーww」
希新
「望むところだしーww 置石なくても良いしーww」

「いい度胸だ! かかってきなさいw」
希新
「よーしw」

………………。

【背景:明転】

希新
(ごめんなさい……お父さん。
私は、本当にダメな人間です……)
希新
(あいかわらず……この囲碁には振られっぱなしの、片思い)
希新
(片思いだけど……私は、今もずっと囲碁が好きなんだ……)
希新
(またきっと……小さいときみたいに)
希新
(楽しく、友達と囲碁を打てる日が来ますように……)

……。
…………。
………………。