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「気がつく」
麗の過去番外編

回想

季節は夏。
夏休みだ。
俺はショッピングという事で、麗と待ち合わせをしている。
少し早く来すぎただろうか?


「ごめん! 待った?」

「ていうか……俊介君が早くきすぎだと思うけど……」
俊介
「居ても経ってもいられなくてな」
俊介
(ああ、今日は対局の再戦日だ)

そして麗は買い物をするらしい。俺はその荷物持ちだろう。
麗と再戦出来るならこれくらい余裕なものだ。


「わ、私変じゃないかな?」
俊介
「ん? ああ、凄く良い感じに決めてきたな! 俺も(再戦にむけて)キメてくればよかった」

「い、いいよ……いつものままで……」
俊介
「その髪を結ぶのは良いな。地味な感じがなくなって、凄く可愛い印象になってる」

「そ、そお?」

「えへへ……好評でなによりですー」
俊介
「ああ、そうだ……」
俊介
「先に言うのもなんだが……その、ようが済んだら一回(対局を)……お願い出来るんだな」

「う、うん……//// もちろん! 俊介君がちゃんとエスコートしてくれたら……何回でも(えっち)しちゃう」
俊介
「よし! 心してかからなくてはな!」

「うん!」

俊介
「ていうか、髪は切らないのか?」

「あ、短いのが好きなら切ろうかな?」
俊介
「いや、長いほうが俺は好きだな」

「ふひひw」

回想おわり

【背景:店】

楽しく店をまわる二人。
おもちゃ売り場で、新しい碁盤を発見する。

俊介
(おお、これは! 息抜き程度の対局になら丁度いい大きさだな……)

碁盤を購入。


「見てみてー髪飾りー!」
俊介
「へー、いろいろあるんだなぁ」

「ほら見て! お星さん!」
俊介
「おお、良い感じ良い感じ!」
俊介
「星と言えば、俺達の対局も星と星から始まったんだよな……」

「え?」
俊介
「麗と一番最初に戦った時の事だ。あの時は、まさか麗があんなに強いやつだとは思わなかった」
俊介
「奇妙な出会いだったな。
だが、あの星がなきゃ俺達はこうしてることもなかっただろう」

「…………」

「これ、買っちゃおうかなぁ」
俊介
「お、そうか?」
俊介
「なら、俺が出そう! この前のお礼程度に思ってくれ」

「え? いいよ。そんな……」

(この前何かしたっけ?)
俊介
「気にするな。コレからの(対局の)事を思えば、これくらい安いものさ……」

【se:ひょい】


「あっ」

麗から髪飾りを取り、購入。
そのまま麗へとプレゼントする。


「あ……ありがとう……大事にする」
俊介
「ああ、大事にしてくれ」

「墓場まで持ってく!」
俊介
「その表現は恐怖を感じるな」

【背景:カフェ】

あたりが多少暗くなり、小腹が空いた俊介たちはカフェへと足を運ぶ。


「ココ、一度入って見たかったんだー。1人じゃなんか入りずらくて」
俊介
「メイドカフェ的なところなのだろうか?」

【se:カランコロン】

店員
「いらっしゃいませー」
俊介
「!?」

中では露出度の高めな制服を来た店員が出迎えてくれた。
周りを見ると女性客より男性客のほうが多いようだ。

ジョセ
「席へご案内いたしますヨー」
俊介
(金髪ポニーテの小さい子だ。こんな俺より年下の子も働いてるのか)

店員に連れられ、窓側の席へと座る。

ジョセ
「ご注文がお決まりでしたら、そちらのボタンでお知らせください」

「はーい」
俊介
「噂には聞いていたが、こういう店もあるんだなぁ」

「この辺にはこういう店とか結構あるから、今度連れてってあげるね」
俊介
「そうか、それは楽しみだ」

しかし、このときの俊介はまだ気付いていなかった。
今後アニメオタクの道へどっぷりとハマってしまう事を!

俊介
「なんだと!?」

「ん? どったの?」

【背景:暗転】

俊介
「うむ! 美味であった」

「美味しかったねー」

「じゃあ、そろそろ出ようか」
俊介
「あ! ちょっと待ってくれ」
俊介
「折角だからココで一回やってかないか? 飯も食った事だ」

「え? ココって……」

「ま、まさかアレの事? 本気?」
俊介
「ん? まぁ本気でやるけど。不満か?」

「いやその……家まで待てないかな? ほら、お店の人にも失礼になるし……」
俊介
「そんなに気にするな。ほら、携帯いじってる奴だっている。今はそんなに混んでない」

「いやいや、ケータイと一緒にされても……」
俊介
「軽くやる程度だよ。すぐ終わる。家まで行く時間も短縮出来るだろ?」

「ええー……」
俊介
「頼むよ! こんな俺のお願いなんかで、麗にあんまり時間取らせたくないからさ」

「うう……そこまで言うなら」

麗、席を立ち。

「こ、こっそりね……ちょっと触るくらいね……」
俊介
「ああ」

【se;ちょこん】
俊介の隣に座る。

俊介
「ってなんでこっちに来るんだよ!? 向こうで良いぞ、向こうで!」

「え!? あ、そう?」
俊介
「大丈夫、そっちからでも手は届くから!」

「そうなの!? で、でも私はそんなに手は長くないかもよ?」
俊介
「ん? 余裕だろ?」

【se:ゴト】

俊介
「ほら、碁盤。さっき俺が持っていない良い碁盤を見つけたんだ。碁石も付いてる」

「え……? へぇ、そうなんだ」

(なんで今碁盤出した?)

【se:ガラララ……】
碁盤の準備をする俊介。

俊介
「あ、そういえば囲碁って「やる」じゃなくて「打つ」って言うよな。
まぁ別に知ってはいたんだが、そのほうが麗にも通じるみたいで、ずっとやるって言っててしまったな」

【se:ドックン!】


(……え? それってどういう……え??)
俊介
「別に「打つ」って言い方でも大丈夫だっただろうか?
なに、どっちの呼び方でもいい。俺はこの対局をずっと楽しみにしていたんだ。
麗と打てるなら呼び方なんて小さな事だな」

【se:ドックン!!】


(……対局を、楽しみに? ずっと……対局の方を楽しみに??)
俊介
「さあ、打とう! この前の俺とは違う! 約束通り、俺は鍛えて帰ってきた!!」

【se:ドックン!!!】


(鍛えて……? あの時の鍛えては……その鍛えての意味??)

「…………」

「あの……俊介君? 私とやりたかった事ってその……え、え、え……っちな事じゃあ、な、なく、って……?」
俊介
「ん? 悪いよく聞き取れないんだが……」

「だから、やるってのは対極の事?」
俊介
「ああそうだ! 俺は麗と囲碁での対局をやりたくて来たんだ! 間違いない!」

「えっと、私達って付き合ってるっけ?恋人として」
俊介
「え……? 恋人としては付き合ってないとは思うが……」

「( ゚д゚)ハッ!」

フラッシュバック!


(じゃ……じゃあなに?
私は……私はずっと、俊介君が、私とやりたいって思ってるって、勘違いして……
え? ずっと? 今、付き合ってるっていうのは? え? なに? それも勘違いで?
ずっと……ずっと私は、勝手に妄想を膨らまして? ずっと付き合ってるものだと?
ずっと俊介君が私なんかとヤりたいものだと? ずっと……ずっと自惚れてて!?
ずっと……そんなわけ、ないのにっていう……え!?)

【se:ゴォッ!】


「……っ!!」

奇しくも、麗の読みの鋭さにより、麗は今全てを察した。
我に帰る麗。


「そ……そっ……!」
俊介
「あれ? うらら?」

「そおおおおおいうううううううううことかよおおおおおおおおおお!!!」
かあああぁぁああ!!

【se:ガタン】