麗過去編に戻る
22
「目の前の強者」
俊介
「う……麗!?」

「そんなに……そんなに囲碁が、好きなら……!」

プルプル……!

【se:カシャ!】
碁石を掴む麗。


「何十局でも打ってやるわあああぁぁぁぁあああ!!」

【se:パチーン!】

俊介
「っ!」
俊介
「あ、ああ……!
俺も、そのつもりだ!!」

麗vs俊介

物凄い風圧に押される俊介
俊介、鋼の武器を構え迎え撃つも、麗の水は刃と化し、鋼の武器もろともまっぷたつにしてしまう。

俊介
(お、おかしい……!? あの時との強さと全く違う!
そうか……そうだったんだ! あの時、俺に対しても手加減していたんだ!
あの時の強さは、ただものじゃなかったが、あれでも本気じゃなかったんだ!
そして、何故か今の麗は俺に対して牙をむいている……!
あの時の比じゃない……明らかに殺しに来ている!!)

【ズバシュッ!!】
俊介の体が真っ二つになる。

俊介
「ぐっ……!」
俊介
(やばい……案の定、右上が死んだ)

「ハイ! 白石かして! もう一局!!」
俊介
「え? いやその……」

「まさか、この1局で終わらせる気?」
俊介
「っ!!
いや、やってやる……!!」

【se:パチッ!】

楓河
『俺らの年齢で、俊くらい強かったら囲碁のプロになれんじゃねーの?』

【se:パチッ!】

俊介
『どうだろうな……。ただ俺も完璧ではない上、このゲームはやたら深く暗黒に満ちている』

【se:パチッ!】

俊介
『この世には、俺に対して9子置おかせて勝つ者も存在するだろう』

【se:パチッ!】

楓河
『そいつぁとんだ化けもんだ』

【se:パチッ!】

俊介
(ああ、いたよ……。その化け物が……)

【se:パチッ!】

俊介
(今……! 俺の目の前に居るぜ、楓河……!!)

【ザンッ!!】
俊介一瞬で支局切断
俊介
「ごふっ……」

それは、数十分の出来事だった。

俊介
「ま……参った……」

「次!!」

【se:パチーン!】
麗、盤上に石を打つ!

俊介
(くっ! こんな、とんでもないやつ相手に……互先で、100回戦ったところで勝てるわけが……!)

【se:カサッ!】
石を手に取る。

【se:ツル!】
【se:コトッ……】

俊介
「っ!」

指から石が滑り落ちる。

俊介
(なっ……なにをやってるんだ! こんな時に……!! って?)
俊介
(な、なんだ……? て、手がガクガク震えやがる……俺が怯えてるのか!?)

右手を見る俊介、ガクガクと小刻みに震えている。

俊介
「くそっ……!」

右手首を持ち、抑える俊介。

俊介
(そうだ……無理なんだ。
体はそれを分かってる。考えだって、それを分かってる。
気持ちだけで、どうこう出来る相手じゃないんだ! 今は一旦引くのが適切……)
俊介
「すっ……すまなかった! ま、負けだ……!! 俺の(ry」

【se:スクッ!】
立ち上がる麗!


「私は!!」

「私は、俊介君と付き合いたかっただけなのに!!」

【se:ガコン!】

俊介
「…………!?」

「…………!!」キリッ
俊介
「…………え?」

【se:ざわざわ……!】


「なになに? 痴話喧嘩ー?www」

「あっ……!」

騒いでしまった事で、我に変える麗。


(ち、違う……!
なんかいろいろ、大事な部分が抜けてる!
私は俊介君と普通に付き合いたかったし、一緒に楽しい事もいっぱいしたかったし、
そういうことも、いっぱい含めての意味で……
その他の事も考えていて、その付き合いたいって意味で! その!!)

【se:かああぁぁぁ!】
顔を真っ赤にする麗

麗、気持ちを整えるためギュッと胸を抑える。


「わ、私帰る……」
俊介
「え?」

「あっ……お、お金……。置いてく……。これだけあれば、足りると思うから……」

【se:ダッ!】
【se:カランコロン】
麗、走り去る。

…………。

俊介
(あいつの言ったこと……今回は聞き逃しはしなかった)
俊介
(明らかに「付き合いたかっただけ」と言った)
俊介
(あの図書室での事……あいつは、ずっとそれを考えて俺と接して来たのだろうか?)
俊介
(な……何を考えてるんだ。……そんなことがあるわけないだろう?)

俊介
(俺が……麗と付き合う事を掛けて、囲碁の対局を申し込んでいたなんて……!!)

俊介
(どのタイミングだ? いや、俺の積極性を考えれば、そう思われても仕方がない)
俊介
(だが、今回ばかりは完璧に聞いてしまった。
それを元に今までの麗の行動を考えれば、ほとんど辻褄があってしまうのも事実……)
俊介
(俺は……俺は、それだけに。麗にとても酷いことをしてしまっていたのではないだろうか……?
だめだ……さっきの対局で頭を使いすぎたか? 思考が回らない)
俊介
[どこまでが勘違いで、どこまでが本気なのか?
今度麗と会う時、どんな顔をして合えばいいのか? 何を話せばいいのか?
俺は考えがまとまらないまま、家へと帰った]

【背景:暗転、麗視点】


「うっ……うぐっ……」

「なにやってんだ……わたしは……」