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03
「ブサイクな子供」
地域の小さな碁会所。

角田七段
「う〜ん……」

宇沙子
「…………」

角田七段
「……負けました、かな」
宇沙子
「ありがとうございました」
老人達
「おおー!」

老人
「こりゃたまげだなぁ……」
老人
「宇沙子ちゃん随分強くなったのう」

老人
「角田先生七段で打ってるんじゃろ?」
老人
「てぇしたもんだ……」
宇沙子
「いえ、今回は運良く勝たせて頂いたまでですから」

角田
「右上の俺の出が悪かったかな。そこから最後まで押されたな……」

老人
「わしらは1つ覚えると10は忘れてしまうからのうw」
老人
「若いものの成長には勝てんわい。はっはっはっはw」

老人
「まったくですなぁw はっはっはww」
宇沙子
(やった……!)

帰り道

宇沙子
(やったわw 初めて碁会所で一番強いお爺ちゃんに勝てたわw)

宇沙子
「勝ってた♪ 勝ってた♪」スキップスキップ

ブサイクな子供
「ままー変な人がいるー」
人妻
「あらあら、上機嫌ね」
宇沙子
「はっ!!」

宇沙子
(もう、やだわ恥ずかしい……。
中学生1年生にもなって子供みたいにはしゃぐなんて!
もう、大人なんだからキリッとした態度で堂々としてなきゃね……////)

人妻
「マー君もテンション上げてこー! ウェイwwwwwウェイwwwww」
ブサイクな子供
「ウェイwwwwwウェイwwwww」

学校。
教室。

男子
「聞いたか? ブサ狩り族のトップが変わったらしいぜ」
男子
「ああ、聞いた聞いた!」

男子
「なんでもそいつが、すっげー美人らしい!!」
男子
「マジで!? つうか女!?」

男子
「あいつら、地域ボランテイアでゴミ拾いしてたところで見たわ……
『街から汚い物を全て排除するのよ!!』とか言って偉そうにしてた」
男子
「しかも優しいドSかよー(歓喜)」
宇沙子
「…………」

宇沙子
(校内なにやら、ブサ狩り族の話で持ちきりね……
まぁ田舎だし、それくらいしか話すネタもないか……私には関係のないこと)

別の休み時間。

グラウンド脇を歩く宇沙子。
たったったった……。

宇沙子
(囲碁……。
この前この辺で一番強い角田先生を倒したわ。
この辺でそれ以上に強い人を知らない……)

カキーン……!

宇沙子
(どこかで囲碁の大会でも開いてないかしら?
田舎じゃそんな情報すら入ってこないわね……)

ブサ男
「宇沙子ちゃん危ない!!」
宇沙子
「え?」

パシーン!!
ブサ男、空中の野球ボールを飛び上がり手掴み!

宇沙子
「…………っ!」

ブサ男
「キリッ…………!」

スタッ

ブサ男
「ひゅー。危なかったね!
丁度声を掛けようと思ったら、ボールが飛んでくるところが見えてさ」
宇沙子
(うそ!? 飛んできた野球ボールを手掴み!?)

宇沙子
(っていうかコイツ……昨日のブサ男!!)

ブサ男
「本当偶然なんだけどね……。怪我なくて良かったよ」

宇沙子
「あ……あり…………」

宇沙子
「っ!!」
宇沙子
(お、お礼? ……冗談じゃない! 変に付け上がらせない方が良い。
好感持たれたと思われたら、何されるかわからないわよ!)

宇沙子
「べ、別に助けてなんて言ってないわよ」

宇沙子
「あんなボール。私の囲碁魔法で吹っ飛ばしてたわよ!」
ブサ男
「囲碁魔法?」

ブサ男
「はは、そっか。変に手駆けちゃったね。
それは、自分が気づいてなくても発動出来るものなのかな?」
宇沙子
「う……」

宇沙子
(くっ……うざいわね。
確かに気づいてなきゃわからないし、今は碁石も持ってない。
今ここに碁石があったら、あんたもまとめて吹っ飛ばしてたところよ)

宇沙子
「昨日「私に関わらないで」って言ったはずよ。
ストーカーとして警察に突き出すわよ」
ブサ男
「ストーカーだなんてそんな……」

ブサ男
「俺はただ、宇沙子さんとお話がしただけなのに……」
宇沙子
「それがウザイっていうのよ!」

宇沙子
「私はあんたなんかと会話なんてしたくないの!
いい加減どっか行ってくれる!?」

ブサ男
「まぁまぁ」
宇沙子
「まぁまぁじゃないわよ!」

ブサ男
「いえいえ、確かに今はこれから授業でしす忙しいでしょう。
放課後、昨日と同じ図書室で待ってます!」

ブサ男
「では、今回はこれで!」シュタッ!
宇沙子
「はあ? ちょっと!?」

たたたたた……!
ブサ男去る。

宇沙子
(なに勝手に決めつけてんのよ……。
もう、勝手に待ってればいいわ……絶対に行かないから!!)

宇沙子
(ああ、むしろいい気味ねw
ブサイクが相手だと良心すら痛まないものねw)ニヤニヤ