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07
「あなたは実に運がいいわ。だって相手が私だったもの」
放課後

宇沙子
(……放課後の図書室。
最初に聞いたのはグラウンドでの事。
あれからもう5日は経つわ)

たったったった……。

宇沙子
(放課後だって、学校が締まるまで3、4時間はある。
相手からしたら私が来る時間なんてわからない。
ましてや来るかすらわからない。
というか来る気すらないと知ってる……)

図書室。
ガラガラ……。
宇沙子
「失礼します……」
宇沙子
(そんなんで、待つバカが何処にいるの?
バカバカしい……)

たったったった……。
宇沙子
(これは確認。そんなバカがいないかどうか確かめるための確認!
いたらぶちのめす……!!)

たったったったった!

宇沙子
「……っ!!」

イケメンがよくやる。
窓際で座って髪をなびかせてるアレ。

宇沙子
「…………;」

ブサ男
「あ、宇沙子ちゃん!」

ブサ男
「今日は来てくれたんだ!! 嬉しい!
あ、それとも本を借りに来ただけかな?」
宇沙子
「……いえ」

宇沙子
「あんたがいるかどうか確かめに来たわ……」
ブサ男
「ほんと! 嬉しいなぁまさか本当に来てくれるとは思わなかったよ!」

ブサ男
「あ、でもそんなに待ってないよ? そのへんにある本とか読んで待ってたし」

宇沙子
「……どの本?」
ブサ男
「え……?」

ブサ男
「えーと、ほらそこらへんのとか」
宇沙子
「どの本かって聞いてんのよ!!」

ブサ男
「……!」

ブサ男
「……いや、宇沙子ちゃんが来ても読んでたら気づかないと思ってさ」

ブサ男
「実は……なんにも読んでない」
宇沙子
「ギリッ……!」

( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン
宇沙子、ビンタ!

ブサ男
「…………!?」

宇沙子
「…………!」

ガタン。
よろけたブサ男、椅子にぶつかり大きな音を立てる。

図書委員
「なに? なんの騒ぎですか?」

図書委員
「図書室では静かにして下さいよ!」
女子
「ブサイクが殴られただけです」

図書委員
「なんだ。思う存分殴りなさい」
すたすた……

宇沙子
「……ブサ男。あなたは実に運がいいわ。だって相手が私だったもの。
他の女子生徒だったらこうは行かない……」

宇沙子
「多分、女子生徒は泣き叫んで、あなたはストーカーとして停学処分ね」

宇沙子
「もっとも殴るのは今の状況だからだけど……」

ブサ男
「はは……それで俺が許して貰えるなら、
いくらでも殴ってくれて構わないよ」

宇沙子
「許す? なんの事かしら?」

宇沙子
「あんたは何も悪い事をしてないじゃない。
ただ、私を待っていただけ。それだけの事。
なのにあんたはその待っていた女に殴られた……」

宇沙子
「誰がみてもとんでもない女じゃない。
あんたもこれで私の事嫌いになったでしょ?」

くるっ
宇沙子
「だから二度と、私を待つような真似、しないでちょうだい」
ブサ男
「…………」

宇沙子
(……これでおわりね。
流石にこんなことされてまで、つきまとうやつなんて誰もいやしないわ)

ブサ男
「俺は……」

ブサ男
「俺は、宇沙子ちゃんが憧れの存在です!」

ブサ男
「俺より頭も良くて、可愛くて、クラスのみんなからも人気があって……」
宇沙子
(……まだ、足りないの?)

ブサ男
「ずっとずっと友達になりたいって思ってて……!」
宇沙子
(もう一発……いえ、諦めるまで何度でも……!)

クルッ……!

ブサ男
「だから俺! 宇沙子さんに殴られたくらいで
嫌いになったりしません!!」

宇沙子
(グーで! 力を込めて……!!)
構えて。
ブサ男
「だって俺!」

ブサ男
「ずっと宇沙子さんの事大好きだったから……!!」
イケメン逆光。

宇沙子
「……っ!!」

ポスッ!
宇沙子のパンチは、
左胸を軽く押す様に当たる。

ブサ男
「俺はただ……あなたと友達になりたかっただけだから……」

宇沙子
「…………っ」

宇沙子
「なんで……よ」

拳を下ろす宇沙子。

宇沙子
「なんで……あんたみたいないいやつが、イケメンじゃないのよ……」

宇沙子
「なんで……運動神経が良くて、料理もできて、頭のいい。
そんなやつがイケメンじゃないのよ……」

宇沙子座り込む。

宇沙子
「なんで……私の事をこんなにも好きな人が、
イケメンじゃないのよ……!」

宇沙子
「なんであんたはそんなにブサイクなのよーーーー!!」

ブサ男
「宇沙子……ちゃん?」

宇沙子
「そんな見た目じゃ、他人から白い目で見られるわよ……!
親に紹介する時、微妙な顔されるわよ!」

宇沙子
「子供があんたみたいなヒドい顔で生まれてきたら、どうすんのよ!!」
ブサ男
「う、宇沙子ちゃん……」

図書委員
「今度は何事!?」

女子
「ブサイクが女の子泣かせました」
図書委員
「そいつぁ重罪ね!!」

図書委員
「早急に先生と警察に連絡を!!」
図書委員
「はい!」

ブサ男
「これはまずい……」
宇沙子
「え……?」

ブサ男
「すみません。俺はもう、隠れなくてはなりません。
だけど、なにか宇沙子ちゃんに埋め合わせがしたい!」

ブサ男
「今度の日曜日、10時に公園の銅像前で待ってます!」
宇沙子
「っ……はぁ……?」

ブサ男
「コレが最後です!
遅くなっても構いません」

ブサ男
「なにかご馳走でも出来ればと思います!」
宇沙子
「ふ、ふざけないで……勝手に決めないで……!」

ブサ男
「俺は待ってます」

ザァ……。
イケメン特有の横風。
ブサ男
「俺……ずっと、待ってます!」

宇沙子
「…………っ!」

たたたたた……!

ブサ狩り警官
「あいつか!?」
ブサ狩り警官
「いたぞー! こっちだー!!」
宇沙子
「…………」

宇沙子
(だから……行くわけないって言ってるでしょう……)