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●第3手「七六八側その1」○
●登場人物○

モブ「女子生徒1」「女子生徒2」「リーゼント」
放課後
【背景:教室】
春。
今日から、部活動にて新しく1年生が部活見学にやってきます。
私はそれに向けて、先輩として恥をかかないようにと、明日美ちゃんに指導碁を打ってもらってるところ。
明日美
「ん? 違う違う」
明日美
「ほら、このタイミング。ここで私の手に答えないで、先手でどこかに打てるでしょ」
佐雪
「でも……こうやって入られたら怖いし……」
明日美
「白から入っても後手ヨセ。今すぐには入れない」
明日美
「いつでも結果を想像して、先手で終わるか後手で終わるか考えて、
手抜ける所は手抜かないと、地合いに遅くなるわよ」
佐雪
「ええ……」
佐雪
「そんな事言われてもわかんないよ……」
明日美
「あんたね……」
明日美
「まぁいっか。そろそろ行こっか、佐雪」
佐雪
「え? どこに?」
明日美
「どこにって……部室に決まってるでしょ……」
明日美
「うるさい一年坊主をだまらせにね」( ・`д・´)キリッ
佐雪
「明日美ちゃん……うわー……」
明日美
「そんな痛い子を見るような目で見んな!」
明日美
「ほら! さっさと立って立って! 部室に行くよ!」
佐雪
「え? あ、ま……まって!」

明日美、教室を見渡す。
明日美
「ん? 残ってるの私達が最後か……」
佐雪
「あ、教室鍵締めないとね」
明日美
「ええ」
佐雪
「じゃ、職員室から教室の鍵借りてきます」
明日美
「一緒に行こうか?」
佐雪
「大丈夫です! 新入部員が来てるかも知れないので、先部室に行ってて下さい!
明日美
「そう? じゃあさき行ってるねー!」

【背景:廊下】
佐雪
(明日美ちゃん……私には到底勝てない相手。
私は高校1年の時から、ずっと囲碁を教えてもらっている。
だから去年の私よりは断然強くなってるとは思う)
佐雪
(とはいっても、最初は団体戦での数合せの一人だった。
1年の時、囲碁はまるっきりの初心者で、負けても良いという事で、数合わせの三将を受け持った。
当たり前だけど、私の対局結果は全部惨敗。
明日美ちゃんとつくし先輩が、勝ててたからなんとか決勝戦まで上りつめることが出来た)
佐雪
(でも決勝戦では負けた。
あの明日美ちゃんが負ちゃった。
結果は1勝2敗……つくしさんだけが勝つという結果になった。
明日美ちゃんは「自分がもっと強ければ……」と泣いてたけど、それを言うなら私だって悪い。
私がもっと強かったら、全国大会に行けたかも知れないのに……)
佐雪
(って、私なんかじゃ絶対に無理だったんだ。
だって明日美ちゃんが負けるくらいだもん。
私なんかより、ずっとずっと強い人がやらないとダメなんだ。
私は応援している側で良い……。
誰か強い1年生が入って来てくれれば……それで)

【背景:職員室】
つくし
「……おや? 佐雪君ではないか」
佐雪
「あ! つくし先輩! お疲れ様です」
佐雪
「まだ、部室には行かれてなかったんですね」
つくし
「ああ、進路相談の事でな。先生と少し話をしていたのだよ。君は?」
佐雪
「私は教室の鍵を借りに」
つくし
「そうか。半分私も同じだ」
つくし
「今日から新入生が部活見学にくるだろう。
あまり多くは期待は出来ないが、一人でも入ってくれれば助かる。
早く部室に向かわなくてはな」
佐雪
「そうですね」
つくし
「そういえば、知り合いで囲碁を打てる子が入学してきたんだ。嬉しいことだ」
佐雪
「え? そうなんですか」
つくし
「ああ、ただその子……いろいろあって、もう囲碁を打ってないかもしれないんだ。
いや、実際打てるのかどうかは、本人にきかないと分からない」
佐雪
「ワケありなんですか?」
つくし
「まぁな……。ただ、当時と同じくらいの強さで、囲碁を打つ気があるなら即戦力になる。
是非とも入部してもらいたい」
つくし
「名前は『神野 七六八』……」
佐雪
「……!」(即戦力の子!)

佐雪
「なら、私がその子を連れてきます!
つくし先輩のお墨付きとなら、私なんかより断然良いチームになると思うんです!」
つくし
「え?」
つくし
「いや、すまない。そういうつもりで言った訳じゃないのだが……」
佐雪
「あっ、いえ違うんです! 私の事は気にしないでください」
佐雪
「つくし先輩は先に部室に行ってて下さい! 私はその子を呼んですぐ行きますので!」
つくし
「あ! おーい!」

【背景:廊下】
2年のドアの鍵を閉める。

【se:ガチャ】

【背景:1年教室前】
佐雪
「…………」
佐雪
(神野七六八ちゃん……。
うーん、勢いで飛び出してきちゃったけど、顔もクラスもわからない……。
男子か女子かも判断は難しそう。なるはって呼び方は女の子っぽいけど……)

【背景:教室】
生徒1
(じゃあねー。また明日ー)
佐雪
「あの、スミマセン!」
生徒1
「!?」
佐雪
「あの、神野七六八って子知ってるかな?」
生徒1
「なるは? えーと……」
生徒2
「ああ! ほら、同じクラスにいた786って子じゃない?」
生徒1
「あ、あの子ね!」
佐雪
(良かった。クラスもここであってたみたい)
生徒2
「もう帰っちゃったみたいですけど……」
佐雪
「え!?」
佐雪
(お、遅かった……。そっか、もうそんな時間。学校に用がなければもう帰ってるよね……)
佐雪
(今は放課後なんだ。帰ったなら仕方ない、部室に行こう。もしかしたら部室に来てる可能性もあるし……)
佐雪
「そっか、ありがと(ry」
生徒2
「あ! いたいた!」
トイレから戻ってくる七六八を発見
生徒2
「七六八さーん! 先輩が呼んでますよー!」
佐雪
(七六八!? 女の子!)

ここで七六八紹介

七六八
「え……? どうかしましたか?」
佐雪
(……この子が七六八ちゃん?)
七六八
「知らない先輩です。はじめまして」
佐雪
「あ、はじめ……まして」
佐雪
「あの、あなたが神野七六八ちゃん?」
七六八
「…………!」
七六八
「た、大変です! 情報漏洩です!」
佐雪
「?」
七六八
「七六八が知らない間に、知らない先輩にまで七六八の名前が知れ渡ってしまいました……!
恐るべし、コンピュータ社会……!」
佐雪
「いやあの……私はつくし先輩から聞いたまでで……!」
七六八
「つくし先輩って誰ですか?」
佐雪
「えええっ!!?」
佐雪
「でも、囲碁は打てるんですよね? 凄い強いみたいな……」
七六八
「そこまでも!?」
七六八
「ま、まさか身長やバストサイズなんかもバレてたりしますか!?
いえ……七六八は気にしてないですが、そういうので評価する男性もいるとの事なので……!」
佐雪
「いやいや! そこまでは聞いてないし漏洩もしてないです!!」
佐雪
「少なくとも私が知ってるのは、囲碁の事だけですよ……」
七六八
「そうですか……」
佐雪
(うぅ……もたもたしていられない! 早く部室に連れて行かないと!)
佐雪
「単刀直入に訊きます! 七六八ちゃん! 囲碁部に入ってください!!」
七六八
「わかりました」
佐雪
(あっ……やってしまった! まずは誘うだけのつもりだったのにいきなり「入って下さい」って言っちゃった!
やっぱりもう囲碁は打たないとかだろうし、そうすぐに入るって言ってくれるわけが……ってあれ?)
佐雪
「あ……あれ? 入ってくれるんですか……?」
七六八
「はい。元々入る予定でしたので……」
七六八
「でも、あまり出席は出来ないかもしれません。言っちゃえば部活入ってるという事実だけあればいいのです!
七六八は多忙なので、商店街の謎を解かないといけません。七六八は遊び盛りなのです!」
佐雪
「そ、それ言う!? ズル休みならこっそり休んで下さい!!」
七六八
「ズルじゃないです! 歴とした私の使命です」
佐雪
(うぅ……この子、本当に囲碁強いのかな?)
佐雪
「……碁力はどれくらいなんですか?」※この世界では棋力ではなく碁力、棋士ではなく碁士と呼びます。
七六八
「碁力ですか?
うーんそう言った言い方がよくわからないもので(ry」

女子生徒
「キャ━━━━ヽ(;`Д´)ノ━━━━!!」

佐雪
「え?」

「いえ、ちょっとでもいいので……」
女生徒
「近づくな! 変態! 死ね!!」

「ですから僕は見ませんから!
出来れば環境を見ておきたいですが、感想さえ頂ければ十分でして……!」
女生徒1
「さいってー!!」
女生徒2
「近づくんじゃねー!!」

「痛い! いたい!!」

佐雪
「……なんか騒がしいですね」
七六八
「暴走族でしょうか?」
佐雪
「違うと思います」
七六八
「見てきます。面白そうです」
佐雪
「え!? 待ってください!」

女子生徒1
「い、いこっ!」
女子生徒2
「う、うんっ」

「ああん! 待ってくださーい!」
女子生徒!
「近づくなこの変態がー!!」
【se:ゴスッ!!】

「おっふぅー!!」
【se:ズサササササ!!】
佐雪
「ひっ!?」
佐雪の下へ滑る慧


「いやぁ……これは失礼」

ここで慧の紹介。


「やれやれ……全然見つかりませんねぇ」
佐雪
(わぁ、なんて顔の整ったハンサムボーイ)
佐雪
「見つからない? 何か探してるんですか?」

「はははっ。そうですねー。なに、大した事じゃないですよ」

「ちょっとした被験者をやって欲しいというお願いです」
佐雪
「お願い?」

「はーい! 僕はただ……」

【se:ガサゴソ】


「この新型バイブの使用の感想を聞きたかっただけです」
佐雪
「変態だー!!」
七六八
「な、なんですかソレは!? 芋虫型のオモチャですか!?」

「はぁい! 玩具ですよー」

「ほら、このボタンを押すと動くんです」
【se:ヴヴヴヴヴヴヴヴヴ……!!】
七六八
「おおー!」
佐雪
「七六八ちゃーん!?」
佐雪
「ダメです! 帰ってきて下さい!! 七六八ちゃんの思ってるオモチャとは全然違うものです!!」
【se:ぐいっ】
七六八
「おっと!」

「いやぁ、興味を持ってくれるとは嬉しい!」

「僕の父がこういった玩具の社長なんですよ。そして僕は制作部長を務めさせて貰ってるわけです」

「僕から設計図を出せば、社員がそれを似せた試作品を作ってくれます。
イイのが出来れば採用、商品化されるわけです」

「しかしながら、女性社員が少なくてですね。こうやって、試作をしてくれる人を探しているわけです。
出来ればタダで試してくれる人を……」

「ね!」
佐雪
(なにこの人気持ち悪い……)

佐雪
「……それで、その実験台となる人がいないか聞いて歩いていたというわけですか」

「実験台とは言いがかりですねー。まぁお察しの通りです」
七六八
「オモチャを作る社長だなんて凄いです! 楽しそうです!」
佐雪
「だから違いますって!! 汚れのない綺麗な目であんなの見ちゃダメですよー!」
佐雪
「っていうか学校にそんなもの持ち出していいんですか!?
そんな事やってるといずれ何か問題起こしますよ!?」

「はっはっは↑↑そうですねーwww」
佐雪
「なにその高笑い!?」


「いやぁ、他の女性陣共々、最初はみんな優しく話してくれたんですけどね。
話をし出したら急に態度が変わってしまって(ry」
黒い影
暴走族
「おいてめぇ!!」

「……はい?」
暴走族
「てめぇか! さっき俺の彼女に手ぇ出したってやつぁ!?」

「え……えーと、なんの事でしょう?」
女生徒1
「間違いなくこいつ! さっき私にバイブ入れようとしたやつ!?」

「あ、ああ! さっきの女生徒さんじゃないですか……」
暴走族
「やっぱりてめぇか!!」
佐雪
「わわ! 言ったそばから……」
七六八
「暴走族ですか?」
佐雪
「今度はその表現で正しいです」
暴走族
「ちょっとジャンプしろ!」
【se:ジャラジャラ】
暴走族
「よーし! その右のポッケの中のものを全部出せ!」
【se:がしっ】
慧、ポケットに手を入れ。
中のものを出す。

「コレでいいですか?」
佐雪
「持ち込み過ぎです!」

佐雪
「!?」
慧の手には、いろいろな小さい玩具と共に、碁石が数箇乗っている
佐雪
(碁石!?)
女生徒1
「うっわ見てこれ! こんなにへんな玩具持ってたしー!」
暴走族
「碁石……!?」
暴走族
「て、てめぇまさか! 鬼碁組の者か!?」

「なんの事でしょうか、それは?」
暴走族
「ふ……まぁいい。
お前、碁石を持っているっていうことは、囲碁は打てるんだな?」

「ええ、まぁ……多少は打てますよ」
暴走族
「なら俺と囲碁で対決だ! お前が勝ったら今回の事は見逃してやろう」
女子生徒1
「え!?」
女子生徒1
「ちょっと! そんな甘い仕返しでいいわけ!?」
暴走族
「バカヤロウ! ココは学校だ!! ただこいつ殴るってんじゃあ、後の結果が悪いんだよ!」
女子生徒1
「現実見えてんなぁ!? そういう判断力のあるところが素敵!!」
暴走族
「ただ貴様が負けたときにゃ、きっちり落とし前付けてもらう……!」

「……わかりました」
暴走族
「行くぜぇ!!」
【se:ゴォウ!!】
どこからともなく碁盤と座布団が表れ、着席!!
【se:ガラララ】
暴走族
「俺が先手だ! 行くぜ! 四露死苦オネガイシマース!!」

「よろしくお願いします」

暴走族:黒
属性:火
主な武器:木刀、拳
刀に火をまとい、攻撃するイメージ

慧:白
属性:雷
主な武器:雷玉、グミ弾
相手の攻撃を華麗にかわし、チャンスをみて打ち込むイメージ

序盤、暴走族が地合い有利。
慧が黒地に入った石が攻められる展開になるが、華麗に交わす。
逆に黒の甘いところが攻められ、黒死。
慧が中押し勝ちする。

佐雪
(この人……すごい強い!)

つづく